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『歯内療法の成功の鍵』というセミナーに参加しました

勤務医の森川です。
今回は9月27日に行われた『歯内療法の成功の鍵』という根管治療に関するセミナーに参加致しましたのでその内容についてお話したいと思います。
今回は歯内療法専門医で東京で開業されている石井宏先生、同じく歯内療法専門医で大阪で開業されている牛窪敏博先生、そしてフランスのKhayat(カヤット)先生が講演されました。

これまでこのブログに根管治療のコンセプトや治療内容について説明してきましたが、今回はどうやって治療方針を決めていくか(治療の意思決定)についてお話ししようと思います。

私たち歯科医師が通常、患者さんと対峙した時、まずお口の中で気になっているところ・自覚症状の有無などについてお話しをすることから始めます(=問診)。
次に訴えられている症状やレントゲン写真、実際にお口の中の状態を確認して診査・診断を行っていきます。
そしてお口の中の状況、治療が必要な場合は治療方法について、また治療方法が複数ある場合はそれぞれの利点、欠点について説明していきます。
そうした情報をもとに治療方針を決めていくのが意思決定であり、最終的にその決定を下すのは患者さん御本人になります。

治療を受けて治る見込み・現在より改善する見込みがあるならば意思を決めることはあまり難しいことではないかと思います。
しかし、根管治療に限らず歯周病治療でも治療効果があまり期待できず抜歯をした方が良いのではないかと考えられる歯については治療をするかどうか非常に悩みます。

根管治療において治療の意思決定が困難となる状態というのは主に以下の3つのようなケースになります
(1)虫歯を除去した後に残る歯の量が少ない場合
(残存歯質量が少ない)
(2)根管の問題と歯周病の問題が併発している場合
(歯内歯周病変)
(3)根管に亀裂が認められる場合

まず(1)の残存歯質量が少ない場合ですが、根管治療をして残すことができたとしても、その後外れにくくてしっかりと咬むことのできる被せ物が装着できるかという問題と、残っている歯が薄いため破折する(歯が割れる)危険性を抱えることになります。
また通常の根管治療では症状に改善がなく、歯根端切除術(歯根端切除術の詳細についてはこちらへ)が必要になった場合、歯根を切除することで歯自体の長さが短くなるため、もともと歯根が短い方では被せ物と残っている歯根とのアンバランスが生じることもあります。
したがって(1)の場合では予後に不安が大きい点で治療の意思決定が難しくなります。

続いて(2)根管の問題と歯周病の問題が併発している(歯内歯周病変)場合です。下のレンントゲン写真には、一番左の歯(左下の奥歯)に歯内歯周病変が認められます。

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レントゲン写真の一番左にある歯は根管治療がされており、土台と金属の被せ物が入っている状態です。この歯は根管の中が感染していることにより根尖(根の先端)に黒く透けた像が認められます。
またさらに根尖付近だけではなく、根の後ろ側や根と根が二股に分岐しているところも黒く透けた像を認めます。これは根管の中に存在する細菌が原因となって生じる根尖病変とプラークという細菌の塊が原因となって生じる歯周病の進行が合併している状態です。
被せ物が入っている手前の歯には歯周病の原因となったプラークが石灰化した歯石がゴツゴツと沈着しているのが認められます。

このような歯内歯周病変がある歯は原因が二つ(根管の問題と歯周病の問題)あるので、根管治療と歯周病治療を両方行う必要があります。
根管の中に存在する細菌が原因で骨の吸収が起きている部分は根管治療を適切に行えば、数ヶ月の期間をかけてまた溶けた骨が再生してきますが、歯周病が原因で骨の吸収が起きているところの骨は再生療法と呼ばれる歯周外科処置(詳細はこちらへ)が必要となります。
歯内歯周病変が認められる場合の治療の流れとしては、まず根管治療を行います。そして数ヶ月間治癒の経過を追います。
その後レントゲン撮影をし、骨の吸収の程度の変化を確認します。根管の中の細菌が原因となって起きている骨吸収の範囲は骨ができている(溶けた骨が元にもどってきている)はずなので、経過観察後に残っている骨の吸収は歯周病が原因で起こっているという判断になります。
歯周病が原因で起きている範囲が大きく歯周外科処置を行っても改善が期待できない場合は抜歯という判断になります。
また歯周病治療を行えば歯を残すことができると判断した場合は保存していきます。
つまり、歯内歯周病変の歯はまず根管治療をしてみないと残せるか判断ができないというチャレンジングな治療が必要であることから、治療の意思決定が難しいと言えます。

最後に(3)の根管に亀裂が認められた場合です。破折(完全に折れてしまっている状態)が認められた場合は歯は残せないという判断になりますが、まだ破折に至らない亀裂の場合は判断に迷います。
現時点で亀裂が小さく根管治療をして残し、そして機能することができたとしても亀裂はその後拡がる可能性が高く、将来的に亀裂がやがて破折となり、その破折している部分が感染源となり得るからです。したがって、亀裂が認められた場合も予後に不安が大きいということで治療の意思決定を困難にさせます。

最初にも書きましたが、治療をするかしないか、どういった治療を選択するかを最終的に決定するのは患者さん御自身になります。私たちは判断する際に必要な適切かつ十分な情報を提示する務めがあります。
時には抜歯しなければならない・抜歯をしたほうが良いと説明することもありますが、常に皆様の口腔内(お口の中)、全身の健康のために最適な判断をして頂けるような手助けをしていけるよう努めていきたいと思います。

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