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SJCDマイクロエンドアドバンスコースを受講しました

勤務医の森川です。今回は10月29、30日に東京で行われたSJCDマイクロエンドアドバンスコースに参加した時のことについてお話したいと思います。
マイクロエンドとはマイクロスコープ(歯科用顕微鏡)を用いて行うエンド(根管治療、根の治療)のことを言います。
今回受講したアドバンスコースは今年の2月に受けたマイクロエンドベーシックコースの続きになります。
(ベーシックコースの内容について知りたい方はこちらへ)
講師は前回と同じ麹町で開業されている岡口 守雄先生でした。

ベーシックコースではマイクロスコープの使用方法やマイクロスコープを用いて治療をする際のポジショニングといった基本的なこと、そして基本的な根管治療ついて主に学びました。

今回のアドバンスコースでは基本的な根管治療では治癒、改善が期待できないような歯に対する根管治療(いわゆる難治性の根管治療)が主な内容でした。
具体的に挙げるとMTAセメント(以下MTA)による根管充填、歯根端切除術、逆根管充填、破折器具の除去などです。
今回はこの中からMTAと破折器具の除去についてお話したいと思います。

MTAについては以前このブログでお伝えしたことがあります。(当院のHPにも書いてありますし、院長のブログにもその内容のことが書かれているものがあります。)
根管治療においてMTAセメントが開発される以前と以後では歯を救える可能性が拡がったと言っても過言ではないと思います。

MTAの適応は、
・パーフォレーション リペア(穿孔封鎖)
歯根・根管に穴があいてしまった場合に封鎖をすることを言います。歯根・根管内に穴が空いてしまうと、穴が空いてしまった部位にもよりますがお口の中と穴が通じてしまうことがありそこから細菌が根管内に侵入してしまい感染が起こるため封鎖をする必要があります。

・根管充填
根管治療を行った場合、最終的には根管内を材料を用いて封鎖(根管充填)をします。
根管充填に用いられる材料はガッタパーチャと呼ばれるゴムの材料が一般的に用いられますが、この材料で根管内をきちんと封鎖することは難しいと言われています。
特に感染が拡がり歯根の先端(根尖)が吸収していたり再治療を繰り返して元の根管の形態から逸脱しているとこのガッタパーチャでの封鎖はさらに難しいものとなります。
それに比べMTAは充填を行う技術に困難を伴うものの、封鎖性や周囲の組織への生体親和性に優れガッタパーチャでの緊密な根管充填が難しい場合非常に有用となります。
※ただし保険診療では根管充填材としてのMTAの使用は認められておりません。

・逆根管充填
通常の根管治療では症状の改善ができなかった場合には根管内だけではなく根管外にも感染が波及していると判断し外科的な処置へと移行します。
外科的処置には歯根端切除術と意図的再植術がありますが、どちらも根管外に存在する感染源を取り除くことと根尖の封鎖を行います。
その際に封鎖する材料としてMTAを用います。他にも封鎖するために用いられている材料(EBAセメント、接着性レジンセメント、過去にはアマルガムなど)はありますが生体親和性に優れる点、出血があっても湿潤環境で硬化する点、硬組織を誘導する点などMTAが現段階で逆根管充填材として最適なためファーストチョイスとなります。
※ただし日本の保険診療では逆根管充填材としての使用は認められておりません。

・覆髄
虫歯が深く神経まで達していた場合でも神経の炎症が可逆的で神経を全て取らなくてもよい場合に行う治療です。
炎症を起こしている神経の一部を切断しそこにMTAセメントを置き封鎖をするのですが、この治療で難しい点は覆髄の適応であるのか判断することにあると思います。
基本的に黙っていてもズキズキするような痛みを伴うような場合は神経の炎症が不可逆的であると考え覆髄の適応から除外されます。
しかし、岡口先生は症状が伴う場合でも覆髄を行っているとのことでMTAで覆髄を行うようになって神経を取る治療(抜髄)がとても少なくなったとのお話でした。

このようにMTAの適応症は様々であり、それを活用することで根管治療によって歯を残せる可能性も高くなったと言えると思います。

ただしMTAは日本の保険の認可の問題と、非常に高価な材料であるため(金(Gold)よりも高い材料のため)全ての方に使えるものではないこと、そして操作性が難しいことが難点ではあります。

最後に破折器具についてお話します。
最近インターネットのニュースを見ていたら、ある芸能人の方が下の奥歯が痛み、顔も腫れたため歯科医院に行ったところ奥歯の根の中に2本ネジが取り残されていたという話題が載っていました。
おそらく根管治療を行った際に使用したファイルと呼ばれる器具が破折して根の中に残っていたと考えられますが、この折れた器具が歯の痛みと顔の腫れを招いたのでしょうか?
答えは違います。
細菌が存在したから炎症が起こり腫れ、そして痛みを引き起こしたことが原因であり、破折した器具が原因であるとは言えません。ラバーダム下で滅菌された器具を使用し無菌的な環境で治療を行っているのであれば破折した器具は炎症を引き起こすことはなく、また被せ物もきちんと適合の良いものを入れてメインテナンスに行っていれば、細菌がこの被せ物から侵入するリスクも下げられたと思います。

もちろん感染が起きており、破折してしまった器具を取り除かなければ感染源を除去することができなければこの器具を除去する必要がありますが、そのためには器具の周囲の歯質を一部犠牲にするため、必要性がなければ(器具を取らなくても感染源の除去ができる場合)必ずしも除去する必要はないと考えられます。

根管は非常に複雑な形態であり、一度細菌が波及してしまうと中の細菌を全て取り除くことはほぼ不可能な器官です。
まずは神経をできるだけ保存するような治療を選択すること、そして残念ながら神経の処置が必要となった場合は細菌が侵入しないような治療を、細菌が侵入してしまっている場合は可及的に細菌を除去・減少できるような治療を心がけていきたいと思います。

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