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歯周病のセミナー(JIPI)を受講しました

勤務医の森川です。今回は10月24、25 日に参加したJIPI(Japan institute of periodontology and implantology)についてお話したいと思います。
7月のJIPIでは歯周病に罹患した歯の抜歯基準について講義を受けましたが、今回は歯周組織と歯周外科処置、根分岐部病変に対するアプローチについての講義と実習を行ってきました。
(7月のJIPIについての詳細はこちらをお読み下さい。)

根分岐部病変という言葉を耳にしたことがある方、またご存知の方はそう多くはないと思います。
お口の中には親知らずも含め全て生えていれば32本の永久歯が存在し(親知らずを除くと28本)、前歯と奥歯(=小臼歯、大臼歯)に大別されます。

前歯、小臼歯、大臼歯では鏡でご覧になってもわかるように、歯冠(歯茎より上に見えている部分)の形態が異なりますが、歯茎の下に存在する歯根(=歯の根っこ)の形態や本数も異なります。
前歯の歯根の本数は1本ですが
小臼歯になると1本か2本
大臼歯になると2本か3本
親知らずではさらにバリエーションは増えます。
根分岐部というのは複数の歯根を有する歯牙に認められるもので、その名の通り歯根が分岐する部位を指します。

大臼歯には歯根の本数にバリエーションがあると説明しましたが、下の写真をご覧のように上の大臼歯では多くが3本の歯根を、下の大臼歯では多くが2本から3本の歯根を有します。
また歯によっては、歯冠部から分岐部までの距離(根幹:ルートトランク)が長い、短いの違いや、歯根と歯根との開き具合(離開度)の違い、エナメル突起(エナメルプロジェクション)と呼ばれる構造物が認められる場合があります。

jipi

歯周炎(歯周病)が発症していない状態では根分岐部は骨と歯肉により隠されていますが、歯周炎が発症・進行し骨吸収が起き、根分岐部への細菌侵入のルートが確立されてしまうと歯周炎の進行が促進します。

歯周炎の原因はプラークと呼ばれる細菌の塊で、細菌は分岐部のように凹んだ部位を格好の棲家とします。従って分岐部が歯肉で覆われており、清掃道具が入れられないような場合はプラークをご自身で除去することが困難になるため、歯周病がより重篤化しやすくなるのです。
さらに困ったことに、歯科医院にてスケーリングやSRPといった歯石を除去する治療を行ってもスケーラー(歯石を除去する専用の器具)を分岐部に確実に到達させることは非常に難しいと言われています。

このように根分岐部に歯周炎が波及すると重篤化しやすく
下のレントゲン写真(左)のように歯を支えている骨の吸収が拡がっていきます。このような状態を根分岐部病変と呼びます。

jipi-xray

(話が複雑になるので詳細はまた機会があれば後日お話し致しますが、根分岐部病の原因は歯周病以外にも、根管の感染や歯根破折、穿孔なども挙げられます。)

根分岐部病変に対する治療方法は骨吸収の状態、歯根の形態(長さ、太さ、離開度など)、歯の状態(治療の既往、根管治療の既往など)、リスクファクターの有無(歯ぎしり、くいしばりなど)、咬み合う歯の状態などを併せて判断していく必要がありますが、やはり個々で歯の形態のバリエーションが異なるため画一的な治療方法を定めることは困難です。

根分岐部の骨吸収が軽度の場合では分岐部をスケーラーという器具で掻爬(歯石や炎症を起こしている歯肉をきれいにする)したりしますが、進行した根分岐部病変では外科的な処置や抜歯を考えなくてはなりません。

歯周病に対する外科的な処置については以前お話しさせて頂いたことがありますが、根分岐部病変では歯周再生療法以外にその特徴的な歯根の形態を利用した方法をとることがあります。

上のレントゲン写真は2本に歯根が分かれている下の大臼歯ですが、根分岐部病変が分岐部周囲に認められるものと(左)
一方の病変が進行し歯根の周囲の骨が著しく吸収しているもの(右)があります。

まず根分岐部に骨吸収は認められるものの歯根を支えている骨はまだ残っている場合は歯を分割して歯根と歯根とを分ける処置が行えることがあります。
歯根を分割することと、分岐部周囲の歯肉、骨の形態を整えることにより清掃が困難であったところを清掃しやすくする目的で行います。

また、一方の骨の骨吸収が著しい場合は歯根を分割した後、支える骨がある歯根を残してない方を抜いていきます。ひとつ歯根がなくなってしまったので、抜いた後は横の歯と連結をして被せ物を入れていくことになります。

これらの治療は根分岐部病変を抱えている歯を延命することはできても、歯根の本数や歯の量が減ることにより咬み合わせのかかる負担が大きくなるため、永続的に歯を残すことができる治療ではないと言えます。

歯周病はある程度進行するまで症状がはっきり出ることが少なく、気づきにくい病気です。痛みや腫れ、出血、歯の揺れといった症状が認められた場合はすでに歯周病が進行している状態で、原因であるプラークや歯石を除去する目的で行う基本治療以外に外科的な治療や抜歯が必要となることがあります。
歯周病にならないよう気になることがなくても歯科医院に健診に来て頂き、お口の健康を守るお手伝いができればと思います。

また、今回の講義では歯周組織についてそれぞれ組織学的な特徴と役割について復習する機会がありました。
日々の診療ではお口の中の異常について焦点を絞ってしまいがちですが、正常な状態を正しく理解していなければ異常であるかどうか判断することはできません。
また一つ一つの組織の特徴を理解していなければ切開などの基本的な外科的な処置を適切に行うことはできず、改めて基本の重要性を確認しました。今後もより基本を大切にして日々の診療を行っていきたいと思います。

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